理化学研究所

加藤ナノ量子フォトニクス研究室

研究内容:フォトニック結晶共振器における局在導波モードと共振器モードによる双共鳴

二つの異なる波長で同時に共鳴する光共振器を双共鳴共振器と言います。このような共振器の二つの共鳴波長を発光体の発光波長と励起に使われる波長に合わせる事ができれば、より高効率な発光が可能になります。特に、カーボンナノチューブは吸収と発光で強い共鳴ピークを示すため、著しい発光増強が期待できます。カーボンナノチューブはフォトニック結晶微小共振器と相性が良いため、本研究ではフォトニック結晶共振器における局在導波モードと共振器モードという二種類の共鳴モードを使った双共鳴の実現に挑戦しました。

作製したデバイスの共振器部分でフォトルミネッセンス(PL)を測定すると、鋭いピークが観測され、シリコンの発光が共振器モードによって増強されていることが確認できます。ここで、励起波長を900 nmから832 nmに変えると、面白いことにスペクトル全体で50倍のPL増強を観測できました。このような発光増強をより詳しく調べるために、共振器部分でフォトルミネッセンス励起分光(PLE)測定をしました。PLEマップ内の横線から、局在導波モードにより励起波長に依存したPL増強が起こっていることが分かります。PL強度を励起波長の関数としてプロットしたPLEスペクトルでも、鋭い励起共鳴ピークが見られます。一方、共振器モードは縦線としてマップ上に表れていて、PLEマップの縦線と横線の交点では共振器モードと局在導波モードの双共鳴が実現できています。

photoluminescence spectrum
共振器部分で励起波長を変えた測定したPLスペクトル
photoluminescence excitation map
共振器部分で測定したPLEマップとそのPLEスペクトル

次に双共鳴の制御方法を調べるために、局在導波モードと共振器モードの格子定数依存性と共振器長さ依存性の測定を行いました。その結果、格子定数を選ぶことで局在導波モードを調節でき、共振器長さを変える事で共振器モードを独立に変えられる事がわかりました。このようなシンプルな方法を用いることで双共鳴を所望の波長に合わせる事が可能だということを明らかにしました。

lattice constant dependence
局在導波モードと共振器モードスペクトルの格子定数依存性
cavity length dependence
局在導波モードと共振器モードスペクトルの共振器長さ依存性

本研究の詳細については、こちらの論文を参照してください。
X. Liu, T. Shimada, R. Miura, S. Iwamoto, Y. Arakawa, Y. K. Kato Localized guided-mode and cavity-mode double resonance in photonic crystal nanocavities Phys. Rev. Applied 3, 014006 (2015). Link to publisher pdf