研究内容:波長領域における空気モードナノビーム共振器と単一カーボンナノチューブの光結合の制御
カーボンナノチューブは通信波長帯で動作する微少なSi上の発光材料として注目されています。特に空気モードの微小共振器と組み合わせると、効率よく光を取り出したり、発光を増強することができるため、光通信や光集積回路における微小な発光素子としての応用が期待されています。
このような発光増強はカーボンナノチューブの発光波長と共振波長のずれがどれほどかによって大きく変わります。したがって、いったんデバイスを作製した後に波長を調整することができれば、書き換え可能な光デバイスなど新たな機能を生み出したり、共振器による発光増強を定量的に見積もることが可能になります。
本研究では、架橋カーボンナノチューブ表面の分子をレーザー加熱によって着脱することで共振器とカーボンナノチューブの波長のずれを制御できることを実証しました。空気モードのナノビーム共振器をシリコン・オン・インシュレータ(SOI)基板から作製し、化学気相成長法によってカーボンナノチューブを共振器上に成長しました。
このようなデバイスにフォトルミネッセンス(PL)測定をレーザーパワーを変えながら行いました(下図)。加熱によって分子が外れることでカーボンナノチューブ由来の線幅の太いピークが短波長側にシフトする一方、共振器由来の鋭いピークはほとんど波長が動かないことが分かります。2つのピークが重なる状態で共振器からの発光が最大化されていることが確認でき、最もずれが小さい場合と大きい場合では発光増強率が10倍も違うことが分かりました。
本研究の詳細については、こちらの論文を参照してください。
Spectral tuning of optical coupling between air-mode nanobeam cavities and individual carbon nanotubes
Appl. Phys. Lett.
112, 021101 (2018).