研究内容:架橋カーボンナノチューブにおける励起子‐励起子消滅
これまでの研究で、カーボンナノチューブにおける励起子はよく拡散することが分かっています。そのため、励起子同士が衝突して消滅するという、励起子‐励起子消滅過程が高効率で起きることになります。この現象は発光効率に影響を与えるほか、単一光子生成とも関連しているため、その発生機構や挙動を理解することが大事です。
そこで、架橋カーボンナノチューブにおけるフォトルミネッセンスの励起強度依存性を実験的に測定し、モンテカルロ・シミュレーションおよび拡散方程式の解析解と比較しました。励起強度が強くなると、励起子密度が高くなり、励起子‐励起子消滅過程がより頻繁に起きます。そのため、発光強度は励起強度に対して線形未満の依存性を示します。
興味深いことに、励起強度に対して三分の一乗で発光強度が増加することが確認されました。これは励起子‐励起子消滅過程が密度の三乗に比例して起きることを示しています。二粒子の散乱では密度の二乗に比例して起きるのが普通なのですが、カーボンナノチューブでは一次元の系であるために励起子同士がすれ違うことはなく、必ず正面衝突するために二次元以上の系とは依存性が異なるのです。
本研究の詳細については、こちらの論文を参照してください。
Exciton diffusion, end quenching, and exciton-exciton annihilation in individual air-suspended carbon nanotubes
Phys. Rev. B
91, 125427 (2015).