研究内容:単一カーボンナノチューブによる電界制御可能な光パルス列生成
カーボンナノチューブにおける励起子は多様で特異な相互作用を示すため、これを利用して新たな機能性を持ったナノスケールのフォトニクスやオプトエレクトロニクス素子の実現が期待できます。例として、キャリアを介した励起子緩和によってゲート電圧印加時にフォトルミネッセンス強度が減衰することがすでにわかっています。本研究ではこのような過程を利用することにより、電界制御可能な光パルス列生成を実現しました。


このデバイスでは、溝の片側に架橋カーボンナノチューブへの電極があり、反対側に電界を印加するための局所ゲートがあります。シリコン・オン・インシュレーター基板のトップシリコン層を利用することで、高速で効率的なゲート操作を可能としています。面白いことに、通常はゲート印加時に発光強度が減衰するにもかかわらず、矩形波電圧を加えた場合には高周波領域で発光強度が回復することがわかりました。これは、電圧変化時にナノチューブが一時的に明るく発光するようになっていることを示唆しています。

そこで、フォトルミネッセンスの時間分解測定を行ったところ、確かにゲート電圧ステップと同期して光パルスが繰り返し発生していることが確認できました。このデバイスは電気的なクロック信号を二倍の周波数を持つ光パルス列へと変換していると言えます。本研究成果は、光パルス生成そして電気-光信号変換を実現する新しい手法であり、ナノスケールにおける光制御に新たな展開をもたらすことが期待できます。
本研究の詳細については、こちらの論文を参照してください。
Gate-controlled generation of optical pulse trains using individual carbon nanotubes
Nature Commun.
6, 6335 (2015).