研究内容:カーボンナノチューブ光デバイス基板としての六方晶窒化ホウ素
二次元材料はユニークな電子・光物性を持ち、次世代デバイスの材料として注目を集めています。六方晶窒化ホウ素(h-BN)は絶縁性の二次元材料で、不純物および欠陥が少なく、他の二次元材料の性能を引き出せることが分かっています。h-BNを二次元材料とシリコン基板の間に挿入すると、シリコン表面の粗さやダングリングボンドなどの影響を遮蔽することができるのです。一方、カーボンナノチューブは一次元材料であり、二次元材料同様に基板や表面の状態に敏感です。合成直後の架橋カーボンナノチューブは清浄な状態であり、光学特性は優れているのですが、シリコンなどの基板と接触すると消光効果が起き、 フォトルミネッセンスの強度は激減します。本研究では、h-BNとカーボンナノチューブのヘテロ構造を作り、h-BNとカーボンナノチューブの相互作用を調べました。その結果、h-BNがカーボンナノチューブ光デバイス基板として理想的な特性を持つということが分かりました。
h-BNを架橋カーボンナノチューブの上に転写することによってヘテロ構造を作りました。転写前後のカーボンナノチューブのフォトルミネッセンス励起スペクトル を測定しました。転写後のスペクトルの強度と半値幅は架橋カーボンナノチューブと同程度の値を示し、h-BNが理想的な基板であるということが明らかになりました。
さらに、転写後のカーボンナノチューブの励起子発光と共鳴エネルギーが小さくなり、h-BNの遮蔽効果が強いことも分かりました。下の図は400以上の励起スペクトルマップから得た統計的な結果をまとめたものです。単純な誘電遮蔽によって説明しきれないほど大きなシフト量が観測されています。
本研究の詳細については、こちらの論文を参照してください。
Hexagonal boron nitride as an ideal substrate for carbon nanotube photonics
ACS Photonics
7, 1773 (2020).