理化学研究所

加藤ナノ量子フォトニクス研究室

研究内容:架橋カーボンナノチューブ分割ゲートデバイスにおける冷たい励起子の電界発光

単層カーボンナノチューブを電極と接触させ、両端から電気的に電子と正孔を注入すると、エレクトロルミネッセンスを観測できます。ナノチューブには基板に接触していると発光が弱くなるという性質があるため、本研究では、架橋した単一のナノチューブで発光ダイオードを作製しました。シリコン基板上の電気駆動のナノスケール光源として、将来的には光電気集積回路などへの応用が考えらます。

Device schmatic
デバイス模式図

このデバイスでは、シリコン・オン・インシュレーター基板のトップシリコン層を分割ゲートとして使用します。それぞれのゲートに対し極性が逆の電圧を加えることで、ナノチューブの片側では正孔が、もう片方では電子が蓄積され、p-n接合が単一ナノチューブの内部で形成されます。ソース・ドレイン間にバイアス電圧を加えると、従来の発光ダイオードと同じ原理で発光します。

Electroluminescence
エレクトロルミネッセンスの発光スペクトルとゲート電圧依存性

左上の図に架橋ナノチューブのエレクトロルミネッセンス(EL)とフォトルミネッセンス(PL)のスペクトルを示します。ELの発光波長と線幅がPLと同じ程度であることから、励起子由来の発光であると考えられます。

右上の図は、ソース・ドレイン間電圧を7VにしたときのELのゲート電圧依存性です。横軸にゲート電圧VG1、縦軸にもう片方のゲート電圧VG2をとり、色で発光強度を表しています。VG1が正、VG2が負の領域で主にELが観測されており、この領域では順方向バイアスのp-n接合が形成されていると考えられます。これより、単一の架橋ナノチューブが発光ダイオードとして動作していることが確認できました。

本研究の詳細については、こちらの論文を参照してください。
N. Higashide, M. Yoshida, T. Uda, A. Ishii, Y. K. Kato Cold exciton electroluminescence from air-suspended carbon nanotube split-gate devices Appl. Phys. Lett. 110, 191101 (2017). Link to publisher pdf