研究内容:二次元材料による微小共振器モードシフトの量子化
グラフェン、遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)、六方晶窒化ホウ素などの二次元(2D)層状材料は、その特異な物性と多様な応用の可能性から、大きな注目を集めてきました。マクロな領域で原子レベルの厚みを持ち、ファンデルワールス界面がもたらす幅広い互換性を持つフォトニックデバイスは、ナノテクノロジーにおける新たな方向性を示すと期待されています。しかし、TMDによる微小共振器の制御は困難であり、共振モードもほとんど影響を受けません。
ここでは、二次元材料との相互作用を高めるために、ナノビーム共振器を空気モードとなるように特別に設計しました。電子ビームリソグラフィーと誘導結合プラズマエッチングを用いて、シリコン・オン・インシュレータ基板からナノビーム共振器を作製し、二セレン化タングステン(WSe2)フレークをポリマースタンプ法により共振器上に転写しました。
作製したデバイスに対して、自作の共焦点フォトルミネッセンス顕微鏡を用いて、WSe2転写前後の基本モードを比較することにより、室温での二次元材料との相互作用を評価しました。スペクトルには単一の鋭いピークが観測され、これが基本モードであると同定できます。空気モード共振器は、転写後に26.0 nmの長波長シフトを示し、これは平均誘電率の変化に起因します。この大きなシフトは、空気モードを利用することで共振器の応答性が向上したことを示しており、WSe2フレーク内の大きなモード重なりを示すシミュレーションと一致します。
また、WSe2フレークの厚さを原子レベルの精度で制御することにより、単層の限界まで極めて高い感度を示すことができました。WSe2の厚さを一層ずつ薄くしていくと、波長シフトが3 nmずつ減少していくことが確認されました。モードシフトが実際に量子化されていることを示す、明確な分解されたステップが観察できました。
本研究の詳細については、こちらの論文を参照してください。
Quantization of mode shifts in nanocavities integrated with atomically thin sheets
Adv. Opt. Mater.
10, 2200538 (2022).