研究内容:カーボンナノチューブにおける暗い励起子の活性化
カーボンナノチューブにおける光学遷移はその一次元性のために電子と正孔が束縛された励起子によって支配されます。 また励起子には水素原子と同じく微細構造があり、光学遷移が可能な明るい励起子と、光学遷移が禁止された暗い励起子とがいることが知られています。 本研究では電界により対称性を破ることによって、光学禁制帯に対応した波長の光をナノチューブが吸収できるようになることを示しました。
単一のナノチューブが架橋した電界効果トランジスターを作製し、光電流とフォトルミネッセンスの励起スペクトルが、 加えた電圧にどのように依存するかを詳しく調べました。 すると印加電圧が大きくなるにつれて、光電流スペクトル上にピーク(X, X*)が現れることがわかりました。 これらの準位はこれまで報告のあった、フォトルミネッセンス励起スペクトル上に観測される励起子の励起状態(2u, 3u)と近くですが別の場所にあります。
これらのピークの正体を明らかにするため、様々なカイラリティーのナノチューブに対し同様の測定を行い、直径にどのように依存するかを調べました。 その結果、X, X*に共鳴するエネルギーと発光エネルギーE111uのエネルギー差は直径に反比例していることがわかりました。 さらに過去の2光子吸収の実験と比較することで、これらの準位の正体は、電界を加えることで対称性が破れ光子を吸収することができるようになった、偶パリティー状態であるE11励起子の励起状態であることを突き止めました。
本研究の詳細については、こちらの論文を参照してください。
Electric-field induced activation of dark excitonic states in carbon nanotubes
Nano Lett.
16, 2278 (2016).