理化学研究所

加藤ナノ量子フォトニクス研究室

研究内容:カーボンナノチューブにおける励起子のシュタルク効果

シュタルク効果とはエネルギー準位が電界によって赤方偏移する現象のことです。量子力学の教科書では水素原子(1つの陽子と1つの電子の束縛状態)を例としてよく挙げられていますが、カーボンナノチューブの励起子(1つの正孔と1つの電子の束縛状態)も同様の現象が起こるため、励起子の電界応答を理解する点で重要です。また、シュタルク効果を利用することで吸収や発光エネルギーの制御が可能となり、波長可変の受光素子・光源へのデバイス応用が期待できます。

本研究では、電界効果トランジスター を用いて、カイラリティ の判明している単一架橋ナノチューブに対してフォトルミネッセンス 測定を行い、電界の影響を調べました。

Device schematics
デバイス模式図
Photoluminescence spectra as a function of electric field
フォトルミネッセンスの電界依存性

左下図のように通常の発光スペクトル(黒)と電界印加時のスペクトル(赤)を比較すると発光強度の減少及び発光エネルギーの赤方偏移が見られます。発光強度の減少については励起子の自然解離 由来のものであることが知られています。赤方偏移に関しては右下図のように発光エネルギーが電界の2次関数としてシフトしているためシュタルク効果が起こっていることがわかりました。また、この実験結果は理論計算とも整合性がとれていることも明らかになりました。

Photoluminescence measurements
フォトルミネッセンススペクトルと発光シフトの電界依存性

本研究の詳細については、こちらの論文を参照してください。
M. Yoshida, Y. Kumamoto, A. Ishii, A. Yokoyama, Y. K. Kato Stark effect of excitons in individual air-suspended carbon nanotubes Appl. Phys. Lett. 105, 161104 (2014). Link to publisher pdf